医常は異常

地方で医学を学んでいるものです。おもむくままに書いています。

アナフィラキシー

 2021年の10月に入り、コロナの感染者数の増加は一時的には収束に向かっている様子ですね。

またどうせ次の波がやってくるのでしょう。その際にまた今までと同じような飲食店休業要請などを行うんですかね。

今後も付き合っていかないとならない感染症なだけに、もう少し対応策に一貫性を持っていただけると旅行の予定なども立てやすくなるんですけどね。

 

さて、今日はCOVIDワクチンなどで頻繁に耳にするようになった「アナフィラキシー」についてです。

先日、センセーショナルな記事が飛び込んできました。

www3.nhk.or.jp

 

これについて各社のニュース記事を見て思ったことがあるので述べたいと思います。

 

アナフィラキシーショックとは

 アナフィラキシーとはアレルゲンに接してすぐに発症し、全身に症状がひろがるアレルギーのことです。

アレルゲンに接するとは、〇〇アレルギーというときの〇〇を触ってしまったり食べてしまったりということを指します。卵アレルギー、ペニシリンアレルギーなどです。

症状は、全身が真っ赤になったり、蕁麻疹が出たりといった皮膚症状、咳が出始めたり息苦しくなったりするといった呼吸器症状、そしてお腹の痛みや下痢といった消化器症状、これら複数の症状が出たとき、我々医療者はアナフィラキシーと判断します。

そして、ショック状態とは血圧が下がって脈が早くなり、命の危険が迫っている状態の時です。

このときに即座に投与しなければならないのが、アドレナリンです。

重度のアレルギーがある人はエピペンを処方されていると思いますが、それもアドレナリンです。

 

 

 

アドレナリンについて

 アドレナリンは詳しい説明は割愛しますが、心臓が力強く脈打つようにしたり、血管を収縮させたりすることで血圧をあげます。

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アドレナリン

 

そして、使うときは限られており、心肺停止状態の患者さん、そして今回のようなアナフィラキシーショックの患者さんです。

ただ、重要なのが使う量・投与方法が全く異なります。

 

 

救急医療に従事している医師はそらんじて言えなければなりません。

どちらも1分1秒を争う出来事であり、自分で投与するときはもちろん、他の医師や看護師に間違いなく指示をしなければ命に関わるからです。

 

 

今回の顛末

 ニュースは一部分しか切り取っていないでしょうし、各紙の記事をざっと見し報道のされ方が異なっており一概には言えませんが、今回一番問題とされているのは、おそらくアドレナリンを静注してしまったことでしょう。

他社の記事では投与する薬が間違っていた、というニュアンスになっているものも散見されますが、投与経路が違っていたというのが正確でしょう。もちろん、「誤投与」には違いないでしょうが。

 

 現場に一番最初に駆けつける医療従事者は救急隊員なことが多いです。そして、救急隊員は医療知識・経験値は豊富な方が多いです。

さらに、意外と知られていませんが救急救命士になるには救急隊員になってから更に試験を受ける必要があります。(他の経路もありますが。)

そういった知識を有した人が救急救命士となってはじめて、医療行為を医師の指示下で行うことができます。

 

 そのように、きちんと知識のある方でも、疲労であったり、動転されたり、といった複数の要因が重なって起こった事故なのだと思います。

このことは決して繰り返してはならないことですが、確認体制や労働体制などいくつもの積み重ねで1つの医療事故として表出したのでしょう。

危ないね、で済まさずこの裏にある根幹を追求しなければなりません。

 

そして、私が危惧しているのがこのことでエピペンを打つことをためらってしまう風潮になってしまわないかということです。

教師、保育士などが打つことが可能とようやくなったエピペン。これ一つでなんの誇張なしに、目の前の命が救える可能性があります。

今回のことは、静脈注射をしてしまったことが問題なのです。

エピペンを筋肉注射して起こった出来事ではありません。どうか躊躇しないでください。

 

 

その事実はあまりどのニュース記事にも強調されていなかったので今回書き連ねてみました。